Nature 417, 219 (May 16, 2002)より引用

　アムステルダムのInstitute for Atomic and Molecular Physicsの分析化学者Jaap Boonが率いる研究者らは、スマルトの退色はガラスからのカリウムイオン浸出が原因であることを示した^*。Boonは、スマルトガラス中にカリウムイオンが存在すると、各コバルトイオンの周りで酸素イオンが四面体配位しやすくなると主張している。コバルトイオンは、ある一定量のエネルギーを吸収して、電子をより高いエネルギー準位へと押し上げる。酸素イオンが四面体配位したとき、この状態は赤色および緑色光のエネルギーに相当する。したがって、これらの光は吸収され、残された青色光が反射して目に見えるようになる。
しかし、可溶性カリウムイオンが浸出すると、それより小さなプロトンに置き換わってしまう。四面体配位を強いるカリウムが無くなると、各コバルトイオンの周りに存在する酸素イオンが八面体配位へと配置を変えるので、コバルトイオンが吸収できるエネルギー量は変化する。このエネルギーはもはや可視光線に相当しないため、青色光が選択的に反射されることもない。

References
* Boon, J. J., Keune, K., van der Weerd, J., Geldof, M. & van Asperen de Boer, J. R. J. Chimia 55, 952-960 (2001)